松本遺族会の講話並びに松本墓地公園清掃(10月21日)
穗髙 賢一
令和7年10月21日、長野県護國神社にて松本遺族会の講話並びに松本墓地公園清掃活動に参加させていただき、戦争の悲惨さと平和の尊さについて、深く胸に刻まれる貴重な学びを得ることができました。
長野県遺族会 前会長 池内宜訓さんによる「父との別れ」と題された講話、長野県遺族会女性部による「自分史」の朗読、そして墓地公園の清掃活動という、記憶の継承と慰霊の心を繋ぐ重要な要素で構成されました。
池内宜訓さんの講話「父との別れ」は、戦争の歴史を「個人の悲劇」として捉え直す、重いメッセージでした。幼い頃に父を亡くされた池内さんが語る、残された家族の苦難、特に母親が背負った重責と、父親への尽きることのない想いは、参加者全員の心に深く響きました。戦争という大きな出来事が、いかに人々の日常生活と幸福を一瞬にして奪い去り、深い心の傷を残したのかを、静かで抑制された語り口から強烈に感じ取ることができました。それは、過去の出来事として処理されがちな戦争の記憶を、今を生きる私たち自身の問題として受け止めるよう、強く促すものでした。
続いて行われた長野県遺族会女性部による「自分史」の朗読は、戦争の影の下でたくましく生き抜いた女性たちの歴史を伝えてくれました。夫や父を戦場で失いながらも、子を育て上げ、懸命に生きた女性たちの「自分史」には、戦争による生活の困窮や、精神的な孤独といった、公の歴史には残りにくい、しかし極めて重要な「個人の歴史」が詰まっていました。朗読を通じて、戦争がもたらす悲劇は、戦闘に参加した兵士だけでなく、残された家族、特に女性たちにどれほどの苦痛と試練を与えたのかを、改めて痛感しました。平和への切実な願いと、亡き人々への変わらぬ愛情が込められた朗読は、聴く者の心を揺さぶるものでした。
そして、講話と朗読の後、参加者一同で行った墓地公園の清掃活動は、記憶の継承を具体的な行動で示す場となりました。単なる作業ではなく、先の大戦で犠牲となられた御英霊に対する慰霊と感謝の気持ちを込めて、黙々と墓地公園を清める行為は、先ほどの学びを心に深く刻み込む、実践的な機会となりました。手を動かしながら、この平和が多くの犠牲の上に成り立っていることを再確認し、平和を守り抜く決意を新たにした参加者も多かったことと思います。
戦後80年近くが経ち、戦争体験者の肉声を聞く機会が失われつつある今、長野県遺族会の皆様が、ご自身の辛い記憶を乗り越え、「平和の語り部」として活動を続けてくださることに、心から敬意を表します。この事業は、戦争の記憶の風化を防ぎ、平和の尊さを次世代に繋ぐための、かけがえのない活動です。
護國神社という厳粛な場所で、生の声を通じて受け取った「平和への願い」と「命の重み」を、決して忘れることなく、私自身も平和の継承者としての役割を果たしていくことを固く誓います。